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あなたは安楽死に賛成ですか? ソフィー・マルソー主演の映画『すべてうまくいきますように』が2月3日公開

(C)020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES
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 あなたは安楽死に賛成だろうか?

 安楽死をめぐる父娘の葛藤を描いた仏・ベルギー映画『すべてうまくいきますように』(2021年/113分/配給:キノフィルムズ)が2月3日(金)にヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館などで全国公開される。

 主演は、1980年の『ラ・ブーム』で世界的なアイドルとなり、今なお愛され続けるフランスの国民的俳優ソフィー・マルソーが務めている。

 フランス映画界の重鎮アンドレ・デュソリエ、シャーロット・ランプリング、ジェラルディーヌ・ぺラス,ハンナ・シグラら実力派が重要な役に配置されている。

 監督は『8人の女たち』(2002)や『Summer of 85』(2020)などで知られるフランス映画界の名匠フランソワ・オゾン。脚本家エマニュエル・ベルンエイムの自伝的小説を基に、安楽死を望む父親と、その娘たちの葛藤を描いている。

 生きることを愛していた85歳の父アンドレが突然、安楽死を願う。脳卒中で倒れ、身体の自由がきかなくなったという現実が受け入れられず、人生を終わらせるのを手伝ってほしいと娘のエマニュエル(ソフィー・マルソー)に頼んだのだ。

 小説家のエマニュエルは妹のパスカルと、父の気が変わることを望みつつ、スイスの合法的な安楽死を支援する協会に連絡をとる。一方、リハビリが功を奏し回復していく父は、孫の演奏会やお気に入りのレストランに出かけ、生きる喜びを取り戻したかのように見えた。
 だが、父はまるで楽しい旅行の日を決めるように、娘たちに「その日」を告げる。娘たちは戸惑いながらも、父と真正面から向き合おうとするのだ。

 サスペンスフルなストーリーテリングを得意とするオゾン監督が、緊迫感に満ちた展開の先に用意した、想像を裏切る結末とは――。

 映画でスイスの安楽死を支援する協会とあるが、スイスは1940年代から医師による自殺ほう助を認めている。そして実際にそういう協会があり、全世界の末期患者が「サービス」を求めてスイスを訪れる「自殺ツーリズム」の動きが高まっているという。

 2019年6月2日放送のNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」は大きな反響を呼んだ。重い神経難病を患い自分らしさを保ったまま亡くなりたいと願った日本人女性が、2018年、スイスで安楽死を行った、その自ら死を選んだ女性とその家族を追った作品だ。

 2020年2月16日付「東洋経済新報」ウェブ版によると、小説「安楽死特区」(ブックマン社)を書いた長尾クリニックの長尾和宏院長は「スイスには安楽死団体が複数あって、数年前に訪問したとき『ここで見たことは日本で話さないでください』と言われました。なぜか。日本人が押し寄せてしまうからです」と述べている。

 日本で安楽死は認められていないからだ。一方で、死期が近くなり、延命治療ではなく自然な経過に任せてほしいと本人が望み、それをリビングウィル(生前意思)として書き残し、モルヒネなどによる痛みの緩和に重点を置く、その結果が尊厳死といわれるもの。
 聖路加国際病院の名誉院長だった日野原重明氏は105歳で尊厳死されたという。

 また、「安楽死で死なせてください」(文春新書)という著書がある脚本家の橋田寿賀子さんは、2021年4月4日に95歳で亡くなった。橋田さんは生前「そろそろおさらばさせてくださいという権利があってもいい」という主張を展開していた。

 日本尊厳死協会がある一方で、障害者団体、難病団体、宗教団体、弁護士会などが尊厳死に反対し、議論が進んでいない。およそ8割の日本人がベッドの上で最期まで点滴を受けて、「溺死」させられるが、溺死でなく枯れるという、自然な脱水を容認する文化のほうが最期まで自分らしくいられるのではないかと長尾氏はいう。

 世界に目を向けると、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダなどの国々で安楽死が合法化されている。またアメリカやオーストラリアでも一部の州で安楽死が法的に認められている。前述のスイスは利己的な動機による自殺ほう助以外は罰しないとしている。